皆様、お疲れ様です。
突然ですが、太鼓の達人の人気シリーズである「2000シリーズ」。その7作目である十露盤2000をご存知でしょうか。
十露盤2000は、強制譜面分岐を初めて使用した譜面として有名で、曲中の「たつじんコース」のパートの出題BGMに合わせて普通譜面から達人譜面に変化しています。 しかし、一回目の達人譜面の分岐まで一切の音符を叩かないことで玄人譜面に行くことができ、その内容は面を短音、連打を長音に見立てて構成されたモールス信号となっています。
イエローVer.にて「血で血を洗う歴史は封印された...」の文言に変わって以降音沙汰の無かったモールス信号ですが、2021年の4月21日のアップデートにてついにその内容が変更されました。
かんたん~おにコースまでそれぞれ別ベクトルの内容が書かれており面白いですが、今回触れていきたいのは「おに」のモールス信号となります。
モールス信号の内容を振り返る
まずはモールス信号の中身を思い出してみましょう。
存在しないものが存在するとき
あなたはとある判断を迫られる
深淵を覗くとき
深淵もまたこちらを覗いているのだ
エトウズキッチンや20周年にちなんだ話をしているむずかしいまでとは打って変わってなにやら不穏な文章です。 どういった意味合いがあるのでしょうか。
リークへの警告説と個人的な疑問点
モールス信号が変更してすぐに説として上がったのは、「リークへの警告説」です。
- 存在しないものが存在する→まだ公開されていない譜面を解析で見つけてしまった
- とある判断→それをリークするか踏みとどまれるかという判断
- 深淵を覗くとき~→公式はあなたのリーク行為を見ているぞ、という警告
なるほど、確かに筋は通って見えます。一方で首を傾げたくなる点も多いので解説していきます。
- 隠し要素という「遊び心」にふさわしい内容か
そもそも十露盤2000のモールス信号は「流れてくる音符に合わせて太鼓を叩いてクリアを目指す」という太鼓の達人の目的から大きく外れた「音符の一切を叩かない」という条件の下見られるものであり、おふざけの面が強い要素です。そこにわざわざ警告文を書くというのは興が醒める話ではないでしょうか。
わざわざ1プレイを割いてまでモールス信号を見に来てくれたプレイヤーに対する対価としてあんまりな気がします。
- メッセージが特定の人向けではないか
リークの警告文はモールス信号で流すには特定の人向けすぎて効果が薄いと感じます。
リークをするにはソフトの解析技術が必要で、誰でも簡単にできるものではありません。 そんなリークに対するメッセージを、リークとは無縁のプレイヤーが大多数にもかかわらずモールス信号を通して伝えるのは警告として適切でしょうか。多くのプレイヤーが困惑する結果に終わりそうです。
太鼓チーム「そんなことを俺たちに言われても... なんだ?言ってみろ」
- 時期が噛み合っていない
新規に追加された裏譜面やSwitchの新曲のリークが問題になったのは2020年の出来事であり、リーク警告文だとしたら変更するのが遅すぎると思います。 モールス信号の変更が話題となったのが2021年6月で、ちょうど「パラレルロリポップ」や「4+1のそれぞれの未来」のリーク騒動があったため勘違いされがちですが、モールス信号の変更があったのはそれらの出来事より前である4月であり、20周年記念や後述の「別の目的」のために変更したと考えた方が妥当な気がします。
実際、話題になったのは2ヶ月も後でしたね
- 被害が出ているのに隠して伝えなければいけない必要性はない
リークというのは公式発表によるプレイヤーの喜びや驚きを軽減させてしまう行為であり、多くのゲーム制作会社が厳しく取り締まる姿勢を見せている行為です。
そのリークによる被害が出ているのに、わざわざ隠し要素である十露盤のモールス信号を使って、しかもさまざまな解釈が可能となるような遠回しな言い回しをする必要があるのでしょうか。 モールス信号の変更は無告知です。警告の意味があるのだったら、せめて十露盤2000のモールス信号が変更されたと告知があるべきではないでしょうか。
- 太鼓チームの過去の傾向からして...
太鼓チームは不具合があった際などにはその内容を直接的に書くことが多いです。また不祥事があった際には、それが一部の人間によるものであっても公式ブログで取り上げています。
有名なものとしてはブルーVer.での段位表彰ムービーで起こったスコアネームを利用してとある個人の情報を晒すという問題行為の確認と対応の報告や行為への警告や*1、世界大会外伝オンライン大会での入賞者の不正の疑いに対する報告などです。
ブルーVer.段位表彰ムービーに関する記事↓
世界大会外伝オンライン大会での不正行為に関する記事↓
これらのことから、公式がリークを問題とするならば、モールス信号ではなくそれなりの形での報告を行うことが考えられます。
これらが個人的な主な違和感です。あとは「リークされた譜面を存在しないものと呼ぶのは適切か?」など、強い否定の根拠にはならないので軽く言及するのみにしておきます。
彁に関係している説と、今一つ欠ける決定打
もう一つの説として有名なのが、「楽曲『彁』に関係がある説」です。「彁」とは2021年のエイプリルフール企画で登場した新曲で、「ぼつでーた」として登場したことが「存在しないものが存在する」という部分に通ずるものがある、という説です。
楽曲「彁」の設定を振り返ってみましょう。 YouTubeに上がっている公式の「彁」のMV、作曲者のLeaF氏のTwitterから、彁は「没/破損データとして生まれた者を描いた曲」であることが明らかになっています。「没」という設定は彁が収録されていたフォルダが「ぼつでーた」であったことに、「破損データ」であることはフォルダ説明の「このデータはおかしいよ」であったことによってゲーム内では再現されています。
没データという本来「存在しない」ものは、QRコードをかざすことによって「存在する」ものとしてドンだーたちの前、すなわち「外ノ世界」に顕れました。 「このデータはおかしいよ」「だめだよう」とドンだーに警告が出されるが、「だめだっていったのに」も関わらずドンだーは自分たちの「判断」でその曲を選んでしまう...
とまあまあ筋は通りますが、「深淵を覗くとき~」の文章が前半と比べて上手く解釈することが難しいほか、そもそも彁に関するモールス信号であるなら彁を登場させる以前にモールス信号を変えておき、「あのモールスはこれだったのか!」と思わせた方が適切でしょう。 これらの理由から、個人的にはもう一押し足りない説です。
個人的な結論:真に関係しているのは彁裏だった説
ここまで惜しいところに迫れるのならばやはり彁は正解に近いと考えるべきでしょう。 そしてモールス信号の変更、彁の登場から1年が経過した2022年4月1日、彁に裏譜面が追加されました。 ドンカマに迫り、超えていくその譜面の凶悪さはここで語るまでもないでしょう。 私はこの彁裏こそがモールス信号が暗示していたものの正体だと考察しました。
前述した楽曲「彁」の設定、筐体で表示されるメッセージ、彁をプレイして得られる4つの称号、LeaF氏のツイート、ニーチェの言葉、過去のモールス信号を踏まえて考察していきたいと思います。
先ほど軽く触れた「深淵を覗くとき~」という言葉、これはドイツの哲学者であるフリードリヒ・ニーチェが残した言葉で、全文は、
「怪物と戦うとき、その過程で自らが怪物とならぬよう心せよ
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」
となります。*2 この言葉が表す内容をことわざで言うならば、「ミイラ取りがミイラになる」でしょうか。 人探しをしていたはずが探される立場になってしまった、意見が違う人を説得するつもりがかえって説得されて相手の意見に同意してしまった、といった場面で使う言葉です。
ここで大事なのは原文に「怪物に挑む」という内容がある点です。太鼓チームがこの全文をイメージしながら後半をモールスに仕込んでいた場合、「怪物」にあたる何か(=彁裏)を準備しており、返り討ちに合うほどの脅威であることを伝えていると考察することも不可能ではありません。
また「こちらが戦いを仕掛けたつもりが、怪物からもまた挑まれていた」という点も後で登場します。
また、十露盤2000の鬼譜面のモールス信号は、最難関クラスの譜面を暗示しているという最近の傾向からも、彁裏の暗示であったのではないかという説を補強します。
冒頭でも少し触れましたが、イエローVer.にて変更された十露盤2000鬼のモールス信号の中身は
血で血を洗う歴史は封印された
穏やかな時が流れた
しかしいつまでも平穏は続かない
新たな脅威が迫っている
ほらそこまで
でした。太鼓チームの中では双竜Xa以降の譜面は脅威では無かったのでしょうか、ということはまあ置いておき、幽玄ノ乱に迫るほどの高難易度譜面、「ほらそこまで」と言えるくらいの期間で収録された、と言う点からおそらくこれはInfinite Rebellionのことでしょう。
このモールスは「いつまで血で血を洗ってるんだ」、「結局新たな脅威って何よ」と言われがちでしたが、ソライロVer.からレッドVer.まで長い期間モールス信号は
緊急ニュースです
ドンだーの間でうわさされていた
ゆうーーげーーざざーらーざーさいーきょうーざざーーぷつん
であったことから、モールス信号の対象となる楽曲が解禁されたからと言ってモールス信号が変更されるというわけではなく、暗示したい譜面が現れたら変える*3という流れなのだと推測できるため、やはり新たな脅威はInfinite Rebellionで合っていると思います。
過去2回連続で譜面に関するモールス信号であること、彁が追加されてすぐのアップデートで譜面が変更されたこと、これらからモールス信号は彁裏に関するものである可能性が高いと思います。
ではここからは、モールス信号が示すものが彁裏だとしたときに実際違和感なく成立するか考えていきましょう。
「存在しないものが存在する」に関して、彁自体は2021年の4月に解禁されてしまったため存在しないものとして扱っていいかは難しいです。
しかしLeaF氏のツイートから、去年の時点で彁の裏譜面の構想はあったがエイプリルフール当日にそれは現れず、「本当に没データになっていた」ことが分かります。
このことから彁の裏に関して「存在しないもの」と言える条件は満たしていると言えるでしょう。
それが「存在する」という点においては、昨年のようにQRコードを使うことで「外ノ世界に顕れシ者」となった、との解釈で良いと思いますが、さらに「裏譜面であること」が有効にはたラクと考えられます。
難易度選択画面において、裏譜面というのは表譜面の裏にぴったり隠されており、見た目上は完全に存在しないものとなっています。
では裏譜面を存在するものとするにはどうするか?
カーソルを鬼に合わせた後に、縁を10回入力しますね。
つまり裏譜面を遊ぶかどうかは、プレイヤーがコマンド入力をするかどうかによってのみ決まり、事故で裏譜面が選ばれることはほとんどありません。*4
これはまさに「とある判断」と言えるのではないでしょうか。 「存在しないものが存在する」ようになる「とある判断」はプレイヤーに迫られた、と言うわけです。
裏譜面を選択した際に通常の演出では無く、ノイズが走り無理やり登場したかのような演出が入るのも、裏をゲームシステム上「没譜面」として扱っているため、プレイヤーの判断のせいで無理やりゲーム上に現れるという演出がしたいからだと言えるでしょう。
また、2021年と2022年の演出で大きく異なるのは筐体からのメッセージです。
2021年は「このデータはおかしいよ」「だめだよう」とプレイヤーを警告するようなメッセージが出たのに対して、2022年は「うらゲットおめでとう」「うらにおいでよう」*5とプレイヤーを誘うような言葉となっています。 口調が似ていますが、表の称号は裏と比べてまだ理性が感じられるため、ここでは2021年を筐体からの警告メッセージ、2022年を彁からの言葉と推測します。
「楽曲が言葉を話すとは?」と思うかもしれませんが、彁の設定は没/破損データとして生まれた「者」であることから、人格があってもおかしくはないと思います。
そのとき、このような筋書きが想像できます。
彁はプレイヤーに「うらへのしょうたい」を持ち掛けます。筐体は本来没データである裏譜面に気づくことができず警告が出来ません。裏譜面なのでさらに難化していることは予想がつくでしょうが、プレイヤーは2021年と違い彁という楽曲をすでに知っており、ある者は十分対応できるだろうと信じて自らの判断で裏に挑み、またある者は単純な好奇心から「彁」の本性に挑んだでしょう。そしてその驚異的な譜面で初見は見事返り討ちにあってしまいます。
さて、「自分が怪物に挑む側だと思っていたが、実は相手からも挑まれており、返り討ちにあってしまった」、この状況はまさしくニーチェが「深淵を覗くとき...」の文章で警告していた内容です。 これですべてが繋がりました。
裏をフルコンボして得られる称号「たのしかったね」は彁と戦い、そして勝利したプレイヤーに対する「彁」からの言葉でしょうか。
考察は以上です。 太鼓の達人公式はプレイヤーを楽しませようと色々な企画を日々準備してくださっています。そのためこのような1年仕掛けの予告があってもおかしくはないかなと思いました。
それではこれで〆とさせていただきます。 あくまで個人の妄想に過ぎないのでご了承ください。 それでは皆様、おつカレーライス!
画像引用
どんちゃん切り抜き、プレイ画像、説明画像は自作